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撮影日誌・1日目(その8)

撤収を終え、宿であるキャンプ場のコテージに着いた。すぐさまバーベキューの準備を始めたが、なかなか火は起きない。時間も夜の9時を過ぎ、私はどんどん焦った。見かねた風太くんが、私の傍に来て火種を団扇であおぎ、弥栄さんは真っ暗な周囲をトーチで灯してくれ、やっとのことでバーベキューらしい空気が出来上がった。


肉が焼け、少しずつ酒も入り、みんなそれなりにお腹も満たされたところで、明日の撮影の話になった。風太くんがおれに、「出演したらどうか」という。ハンモックにいる柳さんに演出をつけている時の感じが、フレームの中で良く見えたらしい。演出なんかできていないはずだったけど、それは口にせず、努めて明るく「そっか。わかった」とだけ言ったら、その場にいたみんなが押し黙った。


不意に柳さんが真剣な声を出した。なにを言ったのかは憶えていないが、掴みどころのなかった今日の撮影について、思うところを言ってくれた。続けてみんなが思い思いに何かを言った。最後にまた柳さんが、明日の撮影は「なにをやっても大丈夫だし、おもしろいし、やんなくても大丈夫」みたいなことを言った。強い語気でその気にさせるようなところがまったくない、どちらかと言えば頼りない口ぶりで、私はそれを信じてみようと思った。もうお腹はいっぱいだったが、剛さんが手間をかけてステーキを焼いてくれていた。みんなで花火をして、床に就いた。その晩は月がすごくて、月明かりで山の形がはっきりと見えた。


(つづく)


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